本研究は、若者たちの道徳面や情緒面の成長を促す教育機会の拡充の方策の一つとして、地域の教育力を活用してシティズンシップの育成をはかる教育ネットワークモデルの開発を目的としている。そこで、本年度はアメリカ合衆国において地域に必要なシティズンシップ教育活動を創造している先駆的組織のひとつポインツオブライト財団(Points of Light Foundation)の運営モデルについて事例検討を行った。同財団については、本邦でも地域に根ざしたボランティア活動を支援する非営利組織としてしばしば取り上げられてもいるが、本研究では、この財団の教育ネットワークについて特に着目しているという点で他に類をみない。 この分析によって明らかになった同財団の運営の特性については、以下3点にまとめられる。第一に、同財団では、学校やサービスを受け入れる機関・施設、活動を助成する民間財団、ボランティア機関などをうまく調整するために、既存の地域ボランティアセンターがその拠点となって組織作りが行われている点である。第二に、それぞれのニーズを活動内容へと反映させるために、高等教育機関や、初等・中等教育機関の教師たちではなく、地域で活動しているボランティアコーディネーターたちがプログラムの作成をしている点があげられる。最後に、同財団では、Service-Learning Impacting Citizenship といった青少年の市民性を育むことを主眼においた教育プログラムばかりではなく、こうした活動を各地域で支援するリーダー養成も行っている点である。こうした役割を担う人々や団体を、「コネクター」や「エンゲイジャー」、「モビライザー」などと呼び、こうした人材を配置することでより地域のボランティアセンターにおいて、より有機的な教育ネットワークの実現を図っている点が明らかとなった。
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