最終年度では、地域連携の類型やアセスメントモデルの運用に関する事例分析、あるいはその検証をおこなった。その先進的事例としてアメリカ高等教育でのサービス・ラーニング事業に着目し、大学間連携機構のCampus Compact等などが、どのようにアセスメントを運用しているかについて分析した。これにより、日本の地域社会との連携による教育事業の改善方法に、重要な示唆をえることができた。例えば、アメリカでは連携事業の安定した運営のために、連携機関どうしが最適な連携モデルを構築するための診断票や連携類型の開発がなされている。その際、連携関係を量ではなく質でとらえる方法や、すべての参画者が平等にアセスメントに参加する仕組み作りなどがなされており、こうした視点は各機関に適したアセスメント法を開発する際の重要な鍵であることか明らかになった。 また、今回明らかになった視点を日本の大学-地域間の連携教育事業にあてはめて、今日的な課題についても考察をおこなった。現在、我が国では地域連携教育事業の評価の重要性をようやく気づきはじめた段階だといわざるをえない。しかもまだそれらは、地域社会での体験学習の評価や、地域社会でのインターンシップやボランティア経験を大学が単位認定するための評価であったりと、教育機関側から寄せられる教育評価の要請に応えるためのものが多く、教育事業の改善のためのアセスメントという視点は弱い。アメリカ高等教育におけるSL活動のアセスメントの発展過程を考えれば、我が国の地域社会連携事業のアセスメントがこれから注目され、発展することに期待を抱いてしまうが、その進展は決して容易なものだとはいえないだろう。こうした課題を克服する上でも、今回明らかとなったアセスメントモデルの評価枠や運用方法は重要な視点となるはずである。
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