本年度は、カナダ及び国内の教員養成改革に関する調査と、勤務校の教員養成改革をめぐる状況について検討を主としておこなった。 前者については、教員養成改革がそれほど声高に叫ばれていないカナダに注目し、現在どのような教員養成カリキュラムと組織のもとでおこなわれているのかについて検討した。カナダの教員養成は、専門学位を有する者に対して、教員免許取得のためのプログラムを1~2年間おこなうものである。それゆえ、プログラムは教育学・方法的なものが中心で、教科専門等の科目はない。また長期間にわたる教育実習において、段階的に実習生が責任を負う部分を増やす形でおこなわれている。都市部の2大学においては、教員養成に特化したセンターが設立され、実習校や教育委員会等の外部との連携をおこなう等の機能的分化が進んでいる。また教員養成、教員免許、教員研修についても第三者的機関が責任をもち、そこに大学、教育委員会、学校らがかかわる形となっている。一方、東海岸の地方都市に位置する二つの大学においては、前者のような機能分化や第三者的機関は見られず、基本的には大学や教育委員会等の当事者間の関係によっている。両者の違いは、都市部か否か、それと関連した管理統制を指向する教育改革の経験の有無等に規定されているように思われるが、その違いが教員養成機関に対する信頼の制度化の有無や、教員に求められる専門性の細分化の有無等に影響を及ぼしているように思われる。 後者については、この間の勤務校の教員養成改革について、4年次学生に対するアンケートを中心に分析し、教員養成カリキュラムが一定の効果を上げているとともに、さらなる発展のために、より学生たちの教育実習体験を重視した演習中心の授業などを充実させる必要があることを指摘した。それに対応して、教育実習や教職実践演習などを体系的に実施するための専門組織が必要であり、その実施に向かっていることを明らかにした。
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