本研究は、就職状況の改善が進む中でもなお職業への移行がスムーズにできずに無業者となってしまう学生の発生メカニズムを、社会学的な視点から詳細に解明することを目的とする。卒業間近に回顧的に実施した調査はこれまでにもあったが、回顧的調査では就職活動に関する意識や活動内容に関する回答が就職活動結果によって少なからず左右されるおそれがある。この問題をクリアするためには、就職活動の開始から卒業までリアルタイムにかつ追跡的に調査を行い、その時々の意識や行動を尋ねることにより、就職活動結果に左右されない活動時点での情報を得ることが重要である。 事業3年目の平成21年度は、以下の調査・研究を実施した。 (1) 平成19年度から平成20年度にかけて実施した平成21年3月大学卒業者対象の追跡調査により得られたデータを整理・加工し、調査対象者の就職活動状況と進路状況との関連について分析を行った。 (2) 年度を通じて国内外の既刊の研究・文献等の収集を行い、先行研究の整理を行った。また、関連学会に出席するなどして最新の研究状況について捕捉をした。 (3) 追跡調査におけるデータの扱い方や研究方法について検討をするため、研究代表者が業務で関わっている東京大学社会科学研究所のパネル調査(JLPS)を用いて分析を行った。 (4) また、同じく東京大学社会科学研究所のパネル調査(JLPS)を用いて、大学生の就職活動に関する全国的なレベルでの傾向を捉えるための分析を行い、本事業によって得られた調査データとの比較検討を行った。
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