高等教育におけるeラーニングないしはIT利用教育では、現在、教育工学を中心にその可能性の開発や教育効果の測定が行われている段階である。可能性や効果が明らかになるなかで、我が国では、実際にどういった利用に収束するのかについては、ほとんど研究がなされていない状況である。本研究は、コストに着目して、ベネフィットに見合わないコストがかかる実践は成立しないという比較的リジッドな枠組みを用いて、収束点を探る枠組みを構築しようとする。そしてそこから実際の利用/不利用のパターンを浮き彫りにするものである。本研究のようなeラーニングの現実の収束点を見極める作業は、高等教育を実践する人々にとって必要不可欠であり、応用の可能性を開くものとなる。 ●理論的検討 本研究のモデルとなる分析手法であるUCバークレイ校の化学実験のコスト分析を理論的に検討した。行政の効率化などに用いられるABC(Activetiry Based Costing)によるコスト計算をeラーニングに適用しリストラクチュアリングを測るものである。これらの手法を用いれば妥当性を確保しつつ我が国の実践のコスト分析を行うことができると考えられる。 ●ヒドゥン・コストにかんするプリ調査 eラーニングのコストは、金銭的な面だけでなく、(1)IT利用のためにかかる教員の時間やITスキル形成などの教員の負担、(2)学生の側に発生するITスキル・(機器セットアップ・アプリケーション利用法学習時間を含む)時間的問題などがある。 eラーニングのヒドゥン・コストになりうる障壁について、eラーニングの実践記録や導入事例などを収集・検討した。
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