高等教育におけるeラーニング(ITを用いた教育)にどれくらいのコストがかかるのか、eラーニングが様々な角度から注目され研究がなされる中で、この点については実態把握がなされておらず、よく分かっていない。本年度の調査からは、単純にABC(アクティビティ・ベースト・コスティング)の手法を当てはめることの難しさが見えてきた。ここでは、よりヒドゥンコストに着目することが重要であることがわかってきた。研究・教育という領域の特殊性と深く関わっている可能性がある。 19年度に実施したパイロット・スタディをもとに広汎に大学におけるIT利用の事例についての聞き取り調査を行った。ここがらは、(1) (ヒドゥン)コストがどこに生じており、実践者がどのようにそれを認識しているのか、(2) ベネフィットについてどのような認識を持っているのか、についていくつかの示唆的な事例を得たものの、その全体像を探ることの難しさも同時にわかった。この点は、21年度の調査に引き継ぐ課題である。 対象1ITスキルが高いものの限定的にITを用いている教員(とくに工学部) スキルが高いにもかかわらず、ITを限定的に用いた教育をしている教員が多く見られる。ITスキルが高い場合には、ヒドゥン・コストがかからずに済む。しかし、なぜ限定的に利用するのか、ここからベネフィットとコストの関係の一つのあり方について探った。 対象2ITを積極的に用いている教員(IT推進者以外) IT推進の学問領域や実践者以外にも、ITを積極的に用いている教員も近年増えてきている。彼らは、どのようにITを用い、どのような教育的なベネフィットを見積もっているのか、また、発生するコストをどう認識しどう調整しているかを探った。
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