研究概要 |
19年度に実施した日本の大学143校を対象とした質問紙調査(回収率49%)結果の分析を行った。その結果, ムスリム留学生の在籍は国立大学に集中しており, そうした在籍の多い大学を中心に, 施設の礼拝目的での利用許可や, 学食でのハラールフード提供が近年拡大してきている状況が明らかになった。国立大学の場合, 50人以上ムスリム留学生が在籍しているという大学が48%に達する(私立では19%)。礼拝用に何らかの形で施設を提供している大学は53%であった。学食でハラールフードを提供している大学は13%のみだったが, 在籍100人以上の大学では7校中5校が提供している。しかしその一方で, 宗教に基づくニーズや活動に便宜を図ることへの抵抗感が根強いことも明らかになった。礼拝用スペースやハラールフードの提供を行っている大学4校については訪問調査も実施し, 施設見学とともに,関係教員やムスリム留学生, 学食スタッフ等に対してインタビューを行った。礼拝や戒律にそった食事をとることの出来る環境の有無は学生にとって非常に重要で, 進学先を考える一要素ともなっているが, 礼拝用スペースの確保については,大学側の理解や協力がより得られにくい状況があることが確認された。 20年5月に参加したNAFSA大会での資料情報収集からは, イスラームへの偏見・敵意が社会的にはより強固な米・豪にあって, 大学は中東からの学生獲得に高い関心を寄せ, 大学内外の受入れ環境改善に向けた取り組みも活発化させていることが確認された。 研究成果について, 日本国際理解教育学会及び留学生教育学会で報告したほか, 報告書を作成して調査協力校に送付し, 成果や課題の還元・共有を図った。
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