平成19年度は、講義や就業体験、インターンシップなどの多様な大学教育経験を通して、学卒者がいかにキャリア形成を行っているのか、これらの経験がキャリア形成のうえでいかなる効果を及ぼしているのか、卒業生へのアンケート調査から考察した。さらに、キャリア形成を時系列的に捉えるため、職業への移行期、初職から現職までのキャリア形成期、将来のキャリアビジョンという3つの時点を設定し、大学教育の教育効果について評価した。 まず、日本の学卒者の大学教育の教育的効果への評価についてまとめる。第1に、学卒者は、職業への移行期において、在学中の専攻分野と関連した就業体験が効果を及ぼしていると認識していた。第2に、職業への移行期や初期キャリア形成期では、在学中の学習意欲が効果を及ぼしていると認識していた。第3に、キャリア形成期や将来のキャリアビジョンでは、現在の仕事が専門的、または管理的な仕事である学卒者が、大学教育が初期キャリア形成に教育効果を及ぼしていると認識していた。 以上、学卒者へのアンケート調査から、学卒者のキャリア転換期における大学教育、その中でも特に在学中の就業体験や学習意欲の教育効果の影響を検証してきた。日本の学卒者は欧州諸国に比べると専攻分野に関連した就業体験を経験する割合はまだ少ないが、経験した学生の大学から職業への移行期では強い影響を及ぼしていることが示された。しかし、この教育効果は職業への移行期という短期的な効果にとどまっている。 本研究から得られた課題として、大学教育におけるインターンシップ等の就業経験やキャリア教育、そして学生が自主的に行う就業体験が、学卒後のキャリア形成に教育効果を及ぼす「教育プログラム」を開発することであろう。最終年度は、こういった課題の追求ならびに、教育プログラムの開発を実施する。
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