平成19年度には日本ポピュラー・カルチャーの認識調査を行うなど、データ収集等を行った。平成20年度は、それらのデータの分析を進め、研究した結果を踏まえたモデル授業を行い(大分大学留学生と日本人学生対象)、学生のフィードバックなど、再度データを収集した。今年度の研究で、特に注目した主題は、ポピュラー・カルチャーと多文化共生に関連した部分である。研究を踏まえて、到達した一つの結論は、「日本ポピユラー・カルチャー教育」と一言で括りをつけても、留学生の文化的バックグランドの相違などによって、学生の学ぶ目的と学び方は様々であると言う点である。授業で使用されている教材の異文化比較、また学生のメディア・リテラシーの認識度や、性的マンガの規制に関する様々な反応などを研究し、日本ポピュラー・カルチャー教育は多文化共生問題を考えずに、発展することはないとの結論に至った。 収集したデータ分析と研究の一部は二度の学会発表で報告し、また「多文化共生社会のポピュラー・カルチャー-留学生を対象としたポピュラー・カルチャー教育における多文化共生の現状とその課題」というタイトルで、『日本語教育スタンダードと多文化共生リテラシー-グローバル化社会の日本語教育と日本文化』(ひつじ書房)の一章として掲載される予定である。留学生における日本ポピュラー・カルチャー教育は未だ発展途上の分野であるが、学生のポピュラー・カルチャー学習の動機・目的、学習方法に関する研究を踏まえて、一つのモデルを提供できたことは、この研究の成果の一つであると言える。今後は、カナダ、香港、オーストラリア、タイの高等教育機関で日本ポピュラー・カルチャーを教授している共同研究者と更にこの研究を進めていく予定である。
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