平成19年度に「不登校」「不登校」傾向の児童生徒の担任であった教師を調査対象にして得られた児童生徒とその家族に関するデータをもとに、「不登校」タイプによる家庭背景の相違などについて分析を行った。その結果、特筆すべき点として、(1)ひとり親家庭の比率が18.1%を占め、そのうち母子家庭の比率が16.3%と極めて高く、その中でおおよそ半数の母子家庭が経済的に困窮していること、(2)わが子の「不登校」への対応の中心は大部分が母親であり、そのうち約半数の母親が相談する人やわが子の「不登校」に-緒に対応する人がおらず、孤立していること、が明らかになった。また、(3)経済的に裕福な家庭ほど保護者の「不登校」対応への熱意が高いこと、及び一緒にわが子の「不登校」に対応する人がいること、(4)保護者がわが子の「不登校」対応に熱意が高いほど保護者の「不登校」対応に関わっての疲れの程度が高いこと、が明らかになっている。「不登校」タイプと家庭背景との関連については、(5)経済的に裕福な家庭や子どもの教育に熱心な家庭、保護者の「不登校」対応への熱意が高い家庭、保護者が「不登校」に関わる知識・情報を多く所有している家庭ほど、子どもは自らの時間を主体的に創出していく「安心空間志向」の「不登校」タイプとなる傾向にあること、(6)子どもの教育に熱心な家庭ほど、「不登校」状態にあることを後悔する「自我防衛」の「不登校」タイプとなる傾向にあること、その逆に、(7)子どもの教育に熱心でない家庭ほど、今後の方向性を持つことができない「方向喪失」の「不登校」タイプや学校文化から一線を画した「離脱志向」の「不登校」タイプとなる傾向にあること、が見出された。今後は、これらの知見を踏まえて、「不登校」児童生徒とその家族を中心に学校や地域関係諸機関に求められる支援方法について検討していく。
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