研究概要 |
最終年度である今年度は、学校場面における子どもの逸脱行動を理解するための視点として、現実の学級環境と子どもが好ましいと捉える選好環境における認知の乖離に焦点化して、犯罪心理学会誌「犯罪心理学研究」に下記論文を発表した。 「非行少年の学級環境認知における現実と選好の乖離について」 (要旨)本研究は、一般および少年鑑別所収容少年の学級環境に対する評価を扱うものである。一般中学生および少年鑑別所収容生徒を対象として、独自に構成した現実・選好フォームによる学級環境評価尺度を実施した。学級環境(現実/選好)と個人属性(一般群/非行群)を要因とした2要因分散分析をおこなった結果、「教師の支援」「学級での疎外感」「授業からの逸脱」「規律の乱れ」の因子において、一般中学生・少年鑑別所収容少年ともに現実・選好環境の間に有意な差が認められた。「教師の支援」「学業の負担」では交互作用が認められ、鑑別所収容生徒が一般中学生以上に、現実と選好する環境のギャップ(乖離)が大きく、教師との親密な関わりや支援を求めていることや、学業の負担をより強く感じていることが明らかとなった。これら一連の結果は、Hunt(1975)の人間-環境適合説に基づく主要な先行研究(Stern,1970;Fraser & Fisher,1983)の知見とも合致しており、現実・選好学級環境の評価手法が非行・逸脱行動の早期発見・予防のための生徒指導に活用できる可能性が示唆された。
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