本研究の目的のうち、理論的検討課題としては、 (1) 社会的構成論の社会学上の研究目的と理論的諸問題の整理、および (2) 社会的構成論を教育 (社会) 学的に再編する際の理論的課題の定式化、の2点があげられる。具体的には、第1に本研究が依拠する社会的構成論の特質を整理しておくことを課題とし (上記 (1) ) 、第2に応用社会学であると同時に教育学の一領域でもある教育社会学が純粋科学としての研究成果に加えて教育領域に対する貢献を提出できるように実践の記述をデザインすることを課題としてきた。 このような課題設定のもと、本年度は「いじめ研究」をめぐる言説分析のあり方について編著論文を刊行するとともに、「いじめ」および「授業」という現象について、社会的構成論が果たす可能性に関する理論的定式化について神奈川大学人文学会にて報告を行った。また、社会学的知見を教育学的に再編するという試みを目指す本研究にとって、隣接領域である教育哲学が近年の「臨床」研究への潮流にどのように向き合うのかについて聞き取り調査を実施した。 次に、実証的課題については、本研究は、現場の教員が現実に生起する多様な生徒指導上の問題にどのような点で対応に苦慮しているのかを、学校的・教育的な規範のせめぎ合いの観点から描き出すことを目指している。そのため、小学校現職教員による実践報告を中心とした共同研究を重ね、最終年度報告書において社会的構成論の観点からの実践研究を提出する準備を重ねてきた。
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