本研究の目的は、子どもの非行行動・犯罪被害という事象に対する地域住民の社会的コントロールの今日的様相とそれを規定する地域的諸条件を明らかにすることにある。原因論に立脚する従来の理論への批判から登場した環境犯罪学の視点に基づいて、犯罪・非行という事象の発生を可能にする「機会」を減少させるための、地域社会レベルの実践的手掛かりを得るべく、具体的には、以下の点を明らかにする。 (1)子どもの非行行動・犯罪被害に対する地域住民の管理意識・縄張意識・当事者意識(小宮2005)等は、子ども・非行行動・犯罪被害の指標によってどのように異なるのか? (2)子どもの非行行動・犯罪被害に対する地域住民の管理意識・縄張意識・当事者意識等は、地域社会のリーダーや住民組織、警察、行政機関のあり方(に対する認識〉にどのように規定されるのか? 上記の目的を達成すべく、郵送調査を実施した。福岡県内において都市圏を構成している中核都市と周辺部を対象として層化二段階抽出法によるサンプリングを行い、対象地および対象者の選定を行った。結果、2市2町の有権者2123名に対して調査票等を郵送した。対象者の住所・氏名は、各地域の選挙管理委員会に申請のうえ、審査を経て、『選挙人名簿』閲覧の許可をいただいて入手した。郵送時期は2007年12月及び2008年2月である。全回収票数は787票(回収率37.1%)、うち有効回収票数は777票(回収率36.60%)であった。 単純集計の結果から、子どもの非行行動や犯罪被害に対する地域住民の社会的コントロールといっても、子ども・非行行動・犯罪被害の指標によって異なっていた。次年度は、さらなる分析によって、地域住民の社会的コントロールを規定する地域的諸条件(上記(2))を明らかにしていく予定である。
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