本研究の目的は、子どもの被害・非行という事象に対する地域住民の社会的コントロールの様相を明らかにすることにある。すなわち、子どもの非行・被害の発生「機会」を減少させるための実践的手掛かりを得るべく、地域住民の抵抗性(犯意ある行為者の力を押し返す)・領域性(犯意ある行為者に「ここから先は入れない」と知らしめる)・監視性(侵入してきた犯意ある行為者の行動を把握できる)を明らかにしようとするものである。調査結果の分析に当たっては、世代(若年世代20・30歳代、中年世代40.50歳代、高年世代60歳以上)を軸として設定し、「地域生活構造」、「子どもの被害・非行の発生に対する認識」、「組織的な地域防犯活動に対する認識」、「子どもの被害・非行に対する抵抗性・領域性・監視性」の様相を見た。得られた知見の概要は、以下の通りである。 (1) 世代が上がるほど、地域における人間関係が広範で濃密な者が多く、地域に愛着を感じている者も多い。 (2) 子ども被害・非行については、(1)の結果を反映してか、世代が上がるほど見聞きする者が多い。 (3) 行政や警察の防犯活動については、世代が上がるほど見聞きする者が多く、肯定的に評価する者が多い。 (4) 子どもの被害・非行に対する抵抗性・領域性・監視性を示す行動は、世代が上がるほどとる者が多い。 (5) 子どもの被害・非行に対する抵抗性・領域性・監視性を示す行動は、その子どもの学校段階(小・中・高)が低いほど、とる者が多い。
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