本年度の研究では、まずライフキャリア教育を構想するための基礎資料を得るために、ライフキャリアに関する能力領域の検討を行った。具体的には、1「ライフキャリア」に関する諸能力について質問紙調査を実施し、因子分析により能力領域の尺度を「将来展望・設計」「情報収集・啓発的経験への積極性」「意思決定スキル」「肯定的な自己理解」「他者との関係重視」「生活経験・ライフバランス」を構成した。2.構成した尺度について、キャリアに関する経験・活動(キャリア教育の授業経験、就労的教育的経験、就労経験、学校外でのキャリアに関する活動)にみた差異を分析し、ライフキャリア教育開発への示唆を得た。 次に、得られた知見をもとに、大学に至るまでの学習プロセスを重視した、就学前段階からのライフキャリア教育について検討を行った。研究は、文献研究により以下の方法で実施した。1.ライフフキャリアの方向性が顕著な米国キャリア教育の教科書を手がかりに、学習可能な能力領域名の設定を試みた。2.就学前段階からの発達段階を視野に入れた、米国のキャリア教育カリキュラムの内容分析より、具体的な学習内容と順序性を明らかにした。3.それらの結果をもとに、育成すべき能力領域の構造化を行うとともに、就学前段階からのライフキャリア教育のモデルを構想した。 これらの研究の主たる成果は、ライフキャリアに関する能力の尺度が構成され、能力領域設定の可能性が示唆され、その知見をもとに、米国の中等学校キャリア教育用の教科書、カリキュラムを分析し、各能力領域の学習内容および順序性を明らかにしたことである。そして最終的に、構造化した能力概念に基づき、就学前段階から大学までのカリキュラムモデルを構築した。本研究の意義は、就学前段階からの発達段階に応じたライフキャリア教育の枠組みを示したという点にある。
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