研究概要 |
本研究の目的は,高等学校における創造的・問題解決的な数学の授業の具体を提案することである。本年度では,主に,高等学校数学II「三角関数の加法定理」の単元に焦点をあてて研究を進めた6その結果,主に次の3点が明らかとなった。 1.現在,高等学校で採用されている数学工IIの教科書(平成15年検定,9社20種)を分析した結果,各教科書で採用されている証明方法には大きく4つの方法があり,それぞれの方法にはそれぞれのよさがあるものの,それらの証明を中心に問題解決的な授業展開を図るには,証明に用いる図の複雑さや,活動の目的と解決過程とが整合していない等の問題点があること。 2.三角関数の加法定理に関する質問紙およびインタビュー調査を通して、三角関数の加法定理の証明は、生徒にとって自力で解決するには難しい問題であり、その困難性の背景には、取り組もうとする問題に対する理解や、cos(α-β)の表し方に対する柔軟な見方などの要因があること。 3.前項の量的、質的調査を通して明らかとなった生徒の活動の実態や困難性の所在を基に、三角関数の加法定理の導入授業における支援の方法を仮説的に設定し、授業実践を通してその効果や妥当性について検証した結果、本研究で仮説的に設定した支援の方法は、授業を問題解決的に展開する際の控えめな支援として有効に機能していたこと。特に、三角関数の加法定理について、特殊な場合から問題を一般化するという過程や、証明に用いる図について全体で議論する場を取り入れたことが有効であったこと。
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