研究概要 |
本年度は,研究初年度して「社会科授業改善のストラテジー」の基本的な考え方を,以下2つの側面から解明した。 第1に,「紙媒体の副読本教材」の開発と活用である。社会科の教員は,しばしば事実の羅列的な教授に終始し,子どもの知的好奇心を喚起しない授業に陥りやすい。本課題を解決するストラテジーとして,(1)事実を素材にして概念を探求させる授業づくり,ならびに(2)概念を応用して事実を説明させる授業づくり,を支援する教材を開発した。具体的には,地理的分野の「ヨーロッパ」を例に約7時間分の副読本を作成し,それを活用した実験授業を行うことで,同ストラテジーの有効性と課題を明らかにした。あわせて,事実羅列型授業の改善のために,副読本がそなえるべき内容構成と効果的な活用法について検討した。本成果は、全国社会科教育学会第56回全国研究大会において、「学習材としての社会科教科書の開発と有効性の検証」と題して発表している。 第2に、「デジタル媒体の映像教材」の開発と活用である。社会科の教員は、しばしば言語に依存した指導(語り)に終始し、子どもの納得をともなわない授業に陥りやすい。本課題を解決するストラテジーとして、(1)概念を身近で具体的な事実に適用する授業づくり、ならびに(2)リアルな間接体験を通じて事実を理解させる授業づくり、を支援する教材を開発した。具体的には、小学校段階を中心に、「特産品って何だろう」「裁判って何だろう」「巡礼って何だろう」「新聞の役割」「橋ができて変わったこと」「藍づくりの始まり」の映像教材をつくり、それを活用した実験授業を行うことで、同ストラテジーの有効性と課題を明らかにした。あわせて、言語偏重型授業の改善のために、映像教材がそなえるべき内容構成と効果的な活用法について検討した。本成果は、来年度の学会等で公表したい。
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