研究概要 |
本年度は, 社会科の授業改善に役立つストラテジーを, 2つの側面から明らかにした。 第1に, 教師に「教科の目標達成にむけた合理的なストラテジー」を示唆する「学習材」の開発である。学習対象について, (1) 想定される到達目標と学習課題, (2) 学習課題の追求をうながす社会諸科学の概念・解釈, (3) 概念・解釈を引きだす一次資料, (4) 一次資料の読解や説明・論評の手立てを示した教授学習活動例, これらを複合的に組み合わせた紙媒体を「アフリカ」を例に開発した。あわせて「アフリカ」の学習材が, 教師の授業開発と授業改善にどの程度効果を発揮しうるかを, アンケート調査を通して明らかにした。調査の結果, その有効性が検証された。 第2に, 教師に「教科の目標達成にむけた代替的なストラテジー」を提供する「映像ライブラリー」の開発である。小学校の地域学習で, (1) 校区内で施設や事物を直接見学することのできないとき, 副読本に代わる間接経験の場を提供するために, また(2) 人物の努力・くふうの理解に終始しやすいとき, 行為の意味理解に代わる社会の見方を提供するために, 6本の映像教材を開発した。あわせて, 同教材を単元または1時間の授業のなかで活用するときの効果的な指導法とワークシートを, 実験授業の結果をふまえて提案した。 いずれの成果も, 社会科教師が陥りやすい実践上の課題を, 「科学的な社会認識形成」の観点から乗り越えるストラテジーを示している点に特質がある。また授業改善のストラテジーを「目的合理性」と「実行可能性」の異なる観点から例示し, 体系化できた点にも意義が認められるだろう。
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