本研究は、国語科教師が自ら授業改善を図るための研修プログラムの開発を目的とする研究の一部に位置付けられるが、特に、「読むこと」の領域における、他の教師の優れた授業実践技量を生かした授業改善研修プログラムの開発を目指して研究を進めている。 本年度は、高等学校の国語科の先生のうち、学習者の「読むこと」の学びを広げ深めるべく、優れた授業を実践しておられる数名の先生を対象に、授業作りに関する聞き取り調査を行った。調査では、授業実践技量を構成する諸要因のうち、教師が保有する実践的知識に焦点を絞って聞き取りを行った。研究の方法としては、現在の実践的知識の特質とその獲得過程、および過去の蹉跌経験における実践的知識が浮き彫りになるよう、ライフストーリー・インタビュー法を採用した。 調査の結果、ある先生の場合、蹉跌経験時と現在とでは、実践的知識の構造も機能も、教師が学習者に知識を伝授する形態のものから学習者の学びを引き出す形態のものへと、全く異なるものに変容していることが判明した。この成果については、第113回全国大学国語教育学会岡山大会にて口頭発表を行った。 なお、本研究は、優れた授業実践技量を普遍化・画一化し、その技量を多くの教師に一方向的に継承させることを目的としたものではない。優れた授業実践技量は、学校の特色や子どもの学習歴などの違いごとに分類し、具体化を図る。そして、研修に臨む教師が、勤務する学校・子どもの実態に合った授業実践技量を複数のモデルの中から選択・参照することによって、自己の授業の問題点を発見し授業改善を図ることができるような過程を、授業研修プログラムとして開発することを目的としている。
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