本研究は、国語科教師が自身の授業を改善していくための研修モデルの提示を目的としているが、とりわけ、他の教師の経験知を生かした授業改善のあり方について考察した。研究の方法として、数名の現職高等学校国語科教師を対象に聞き取り調査を実施し、各教師の授業改善に向けた取り組みの軌跡を明らかにした。 具体的な成果として、授業実践のつまずきとその克服過程を異にする複数の教師の自己研鑽の軌跡を事例研究としてまとめ、『和歌山大学教育学部紀要-人文科学-』(第59集、和歌山大学教育学部)、および『教育実践学研究』(第10巻第2号、日本教育実践学会)に発表した。 さらに、研究授業における同僚教師の批評の取り入れ方の異なる3名の国語科教師の授業改善に向けた取り組みの違いを考察し、その成果を日本教科教育学会第34回全国大会(宮崎市)にて口頭発表した。 その結果、1人ひとりの教師が自身の授業を改善する際には、現在直面している課題状況だけを見つめていたのでは不十分であることが明らかになった。過去から現在に至る、さまざまな授業実践経験を大局的に見通し相互に関連付けながら、課題解決の方向を探ることが必要である。つまり、授業改善という教師の学びは、外在する一般法則を参照すれば実現されるというものではなく、当該教師固有の履歴を背景としてふまえ、その教師だからこそできる個性的な取り組みによってこそ実現されるものであるという結論を得た。
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