今年度は主に以下の2点の検討作業を行った。 1.日本の障害児教育カリキュラムの展開の検討:昭和38年養護学校小学部・中学部学習指導要領精神薄弱教育編と昭和46年指導要領及び資料の各教科の内容項目についての比較・検討を行った。その結果、46年新設の生活科は主に昭和38年の社会・理科・家庭の項目を中心に構成されていたが、身辺・学校・家庭・社会生活を網羅するように、生活に即した内容の充実が行われた。その一方で、国語や算数では、生活場面における活動の内容項目が減り教科の系統性が重視された。音楽や図画工作、体育も、同様に教科の特色が強調され、学習活動に付随する習慣的な活動は削除された。しかしながら、その教科の中にも、生活との関連の強い内容は残存しており、生活科とその他の教科の内容項目は、互いに関連していた。このため、知的障害教育の教育課程は、教科別の教育内容の分類による理解と、生活単元学習や日常生活の指導などの指導形態による具体的活動内容の理解との2重構造において捉えられなければならないことが確認された。 2.欧米におけるインクルーシブ教育カリキュラムの展開の検討:今年度は障害児の通常カリキュラムへのアクセスを支える人的資源となっているParaeducator(教育補助員)の導入とその役割の変遷について検討した。その結果、Paraeducatorの活用は、教員不足への対応として始まり、マイノリティーへの公教育保障・雇用機会の提供へと、さらには、障害のある児童生徒への適切な教育の提供のためへと拡大し、その人数も増加してきたこと、また、当初Paraeducatorは、児童生徒に直に接することのない事務を担当したが、現在では指導業務が中心となってきていることが明らかになった。
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