研究目的は知的障害養護学校の小集団指導において、対象児の課題場面での逸脱行動の生起を未然に防ぎ、課題遂行を高める支援方法を検討することであった。20年度では、大学附属の研究施設において知的障害養護学校小学部の音楽や体育の授業場面をシミュレート指導を行った。(1)小集団指導における知的障害・自閉症児の音楽活動への参加促進-補助指導者の位置取りと役割-」と(2)小集団指導における知的障害・自閉症児のランニング課題への参加促進-物理的環境設定を中心に-の実験研究を実施した。(1)、(2)ともに、知的障害養護学校小学部または特別支援学級1〜2学年に在籍し、知的障害や広汎性発達障害、自閉症の男児4名、女児1名の計5名を対象とした。期間は(1)、(2)ともに、H20年5〜12月の7ヶ月、週1回のペースで指導を行った。(1)では、主指導者1名と補助指導者1名によるチームティーチングで指導を行い、約40分の音楽活動「手遊び」「打楽器」「リズム体操」を実施した(27セッション)。その結果、主指導者と補助指導者が対象児の支援を役割分担し、対象児の前方で動作モデルの提示や賞賛を行える位置取りが対象児の音楽活動への参加行動を高めたことや指導者が特定の対象児に個別支援を行うことで他児の離席行動の生起が高まることを明らかにした。(2)では、主指導者1名と補助指導者3名によるチームティーチングで、走る・歩く運動を組み合わせた約30分のランニング課題を実施した(26セッション)。その結果、指導室内で正方形状の頂点に4つのコーンを設置し、紐を使ってコーン間に手がかりを付加する物理的環境設定が対象児のランニングの正反応を高めることを明らかにした。研究(1)と(2)の他にも、学校現場との協同研究(3)「知的障害養護学校高等部の作業学習-評価ノートによる作業量の向上-」を実施した。H20年4〜12月の9ヶ月、知的障害や自閉症の生徒7名が参加した指導者3名による「牛乳パックの解体や紙すき」作業場面での検討を行った。その結果、生徒が自ら作業目標を設定し、作業量を自己評価できる「評価ノート」の導入が作業量を向上させたことを明らかにした。以上の成果はH21年9月に開催される日本特殊教育学会47回大会(宇都宮大学)で発表予定である。
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