わが国の特別支援教育が本格的に推進されるなかで、インクルージョン教育の導入に向けた機運が高まり、その実現のための体制整備が学校教育における不可避の課題となっている。そこで本研究では、通常学級において障害のある子どもを支援するための取り組みが進められてきたアメリカ合衆国を研究対象として、インクルージョン教育を定着させる教育条件の検討を行う。アメリカ合衆国では、1970年代半ばから障害児教育法制が整備され、比較的に早期からインクルージョン教育の課題に取り組んできた点で示唆的であるからである。まず本年度(初年度)の研究では、インクルージョン教育を支える学校システムと実践的対応に注目し、関連する第一次資料の収集、分析を中心に行った。とりわけ、学校におけるインクルージョン実践に関する検討の基盤として、州レベルでの教育行政の動向を明らかにすることを試み、州教育省における資料収集および聞き取りを行った。また、インクルージョン教育の進展に重要な存在である障害のある子どもをもつ親へのインタビュー調査の結果を分析し、学校に対するニーズと課題を検討した。来年度以降、本年度における研究成果をふまえて、より実践的な視点からの検討を進める予定である。
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