研究概要 |
慢性疾患を有する患児の場合、良好な療養環境を整えるには,親との連携が不可欠である。とくに,患児にとって重要な育ちの場となる「幼稚園や学校」と病気のことについて情報を共有し,適宜、必要な支援を得ながら園や学校での生活がおくれるかどうかが,患児はもとより,保護者にとっても心理的安定の鍵となる。 このような背景のもと、従来の研究は小学生以上を対象にした学校環境におけるものがほとんどであり、幼稚園という場での支援状況の実際にかかわる知見はほとんど得られていない。 そこで、今年度は幼稚園という場における慢性疾患患児への支援の現況を明らかにするため、文献研究を行うと共に、行政の担当窓口や知り合いの幼稚園教諭に聞き取り調査を行った。その結果、現時点では、慢性疾患患児に対する包括的な支援システムが構築されていないこと、その前段階となる慢性疾患を有する子どもの人数把握も十分行われていないことが示唆された。そのため、慢性疾患を有する子どもへの個別的なニーズに応じた支援については、個々の保護者が園側に申し入れをし、個別に話し合いをもつことでかろうじて実施されている可能性が推察された。 来年度は、質問紙調査を実施するなど、調査対象数の規模を拡げ、多数のデータを収集・分析し、幼児期の慢性疾患患児をめぐる幼稚園での支援の現況について明らかにしていくことが課題である。
|