本研究は神経心理学的検査による注意欠陥/多動性障害(AD/HD)および広汎性発達障害(PDD)をともなう子どもの認知特性把握および支援の検討を目的とする。本年度は引き続き知能指数および服薬状況を統制した被検者を対象にKeio版Wisconsin card sorting test(KWCST)を実施し、診断分類等の資料に基づき検査成績を分析し、発達的要因やAD/HDのサブタイプ、PDDにおける併存症状の有無による検討を行った。まず、IQ80以上の5-15歳のAD/HD(n=37)とPDD(n=57)および対照群について、それぞれ9歳以下と10歳以上の年齢群別に比較した結果、両群ともに対照群に比して低値であり、9歳以下の年少群において顕著であった。また、学習効果を反映するとされる第2段階での両群の成績の問題は、第1段階での取り組みや第2段階施行前のヒントの活用が不十分であることが示唆され、本検査の第2段階実施の重要性も明らかにした。次に、IQ85以上の5-15歳のAD/HD(n=32)について、不注意優勢型(不注意群)と多動性衝動性優勢型・混合型(多動群)と対照群の3群の比較を行った。その結果、不注意群では保続的エラーを除いたランダムなエラーが著しく、カテゴリーの失念などの不注意によって生じたものと考えられた。一方、多動群は不適切なカテゴリーへの反復的誤りである保続的誤反応を多く認めたことから、反応抑制の問題が推測され、AD/HDのサブタイプ間での認知特性の差異が示された。さらに、PDDに関し、AD/HDの併存の有無による成績比較では併存のない群で多くの指標成績の問題を認め、併存症状の有無による認知特性の差異が示唆された。また、知能検査では著しい問題を認めず、各種神経心理学的検査による精査によって学校生活での諸困難を反映した結果が認められた2事例をもとに支援法について検討を行った。
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