研究概要 |
本年度では,基礎環の深さが1である場合について,標準的なパラメータイデアルの冪のRees代数のGorenstein性を解析しました.Gorenstein Rees代数の基本定理であるIkedaの定理において,イデアルのgradeが2以上であると仮定されていることからも推測されるように,本年度に挑戦した深さが1である場合は,技術的な武器が少なく,本質的な困難を伴っています.よってここを乗り越えれば本質的な発展を示したことになると思われます.先行する結果として,次元が低く2の時には,先駆者達の神業的な計算によるものがありますが,その複雑さゆえ,その方法の高次元化は不可能です.実は,深さが1の場合は私には手におえるものではないと諦めかけたのですが,科学研究費等での旅費の援助を受け,他大学の研究者との研究交流をさせていただき助けられ,何とか形になりました.では,ここで結果を述べさせてください.基礎環Aの次元dが2以上であり,Aの深さは1であると仮定する.Qを標準的なパラメータイデアルとする.このときQのd乗のRees代数R(Q^d)がGorensteinである必要かつ十分条件は,基礎環Aのtypeが1で,AのS_2化Bがquasi-Gorensteinであり,等式1(B/I)=21(A/I)を満たすことである.ただし1(*)は*のA-加群としての長さを表し,Iは(ここでは詳しく述べませんが)ある特別なイデアルです.この結果の系として,重複度が2の深さ1であるd次元Buchsbaum局所環においては,極大イデアルの節減イデアルQを持ってくれば,Rees代数R(Q^d)がGorensteinになることが導かれます.但しdは2以上を仮定しています.この結果はRees代数の環構造を解析する上で,最も重要な例の一つであるHochster-Robertsの例の一般化になっています.
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