研究概要 |
次元ベクトルを固定しA型のクイバーの表現全体を考えると同型類は有限個になるので,それに対応して有限個の軌道を持つ概均質ベクトル空間が現れる.このような概均質ベクトル空間の相対不変式については,表現論や幾何学的不変式論の立場から古くから研究されてきた.今回,これらの空間に付随する多変数のb-関数を決定するアルゴリズムを発見した.研究を開始した時点の見込みでは,向きが任意の場合には相対不変式の現れ方が非常に複雑になり,個々の例を取り扱うことはできるにしても計算結果を一般的に記述するのはきわめて困難ではないかという感触を持っていた.しかし多くの実例の計算を繰り返すことにより,計算結果はグラフを用いてきわめて簡便に記述できるということが分かった.これは研究当初に予想していた以上の成果であった.この結果については,2009年6月の京都大学数理解析研究所における研究会で発表し,また,京都大学数理解析研究所講究録別冊(査読あり)に論文を投稿し受理された.さらに,この研究結果を用いて,特殊線形リー環から現れる放物型概均質ベクトル空間の関数等式を計算する新しい方法を考案した.この新しい方法を用いれば、指数関数や三角関数を含む連立一次方程式を解くだけで関数等式が計算でき、一般的な結果を得ることが期待できる。この研究については、2009年12月に九州大学で開かれた概均質ベクトル空間に関する研究集会で発表した.
|