研究概要 |
(1)本研究で主に用いるクリスタルの理論においては,テンソル積がどのように記述されるかを調べることが重要となる.前年度,私は加藤周氏および内藤聡氏との共同研究で次の結果を得た:「P,QをMirkovic-Vilonen(MV)多面体とする.Pがextremalであるとき,テンソル積P[○!×]Qに対応するMV多面体は,PとQのMinkowski和P+Qに含まれる.」本年度の研究によって,上の定理において「Pがextremal」という仮定が必要ないことが分かった.すなわち,勝手なMV多面体P,Qに対して,テンソル積P[○!×]Qに対応するMV多面体が,PとQのMinkowski和に含まれることを証明できた.また,昨年度に定理を証明した際は主に幾何的な手法を使ったのに対して,本年度は概ね組合せ論的な手法で上の定理の証明を与えた. これまでに得られたMV多面体に関する結果は,量子アフィン代数上のレベル・ゼロ基本表現の結晶基底に対応するMV多面体の理論を構築し,当研究の主研究対象の1つであるrigged configurationを幾何学的に調べる際に役に立つであろう思っている. (2)E^<(1)>_6型の量子アフィン代数上の随伴表現に対応する頂点に付随したKirillov-Reshetikhin(KR)加群については,結晶基底の存在は知られているが,その完全性はまだ証明されていない.尾角正人氏らは,この結晶基底に同型になると予想されるクリスタルを組合せ論的に構成した.本年度,この尾角氏らのクリスタルに含まれるA_<5->最高元たちの多面体的表示に関する予想を証明できた.これはKRクリスタルの完全性やrigged configurationとの関係を調べる上で重要な一歩である.
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