研究概要 |
1、19年度に引き続き、射影直線上の6点で分岐する巡回3重被覆の族を調べた。これは種数4の代数曲線であり、ヤコビ多様体の族は、Hermite上半空間(符号が(2, 2)のUnitary群が定めるI型の有界対称領域)Hを周期領域に持つ。この領域上の保形関数の構成を目指し、以下の結果を得た。19年度考察した1-cycleを利用した周期格子の基底に対し、3-torsion点を調べ、Riemann定数を具体的に決定した。位数3の自己同型による不変theta characteristicsは81種類あるが、上記I型領域上で恒等的にOにならないtheta constantを与えるものは33種類であり、本質的に異なるものは17種類ある事が分かった。17種類のtheta characteristicsに対し、19年度構成したモジュラー群(離散湯に足り群)の生成元を作用させ、どの様に移り合うかを調べた。曲線上の有理型関数をtheta関数を用いて構成し、それを利用してThomaeの公式を複数導いた。 これ等の対称領域は4次元であるが、考えている代数曲線は3次元の族である。この族の自然な拡張と考えられるような、代数多様体の4次元族の構成が望まれるが、その様なものは未だ構成出来ていない。 2、-N-乗法を持つWeil-typeの4次元アーベル多様体の具体的な周期行列(格子)に対し、1-formの基底を定めWeil-Hodge classを微分形式により具体的に表現した。これにより、偏極(theta divisor)の積との関係や、アーベル曲面の直積に退化した場合の直積成分や対角成分等と比較する事ができる。
|