研究概要 |
Abel圏の分解部分圏の概念は, 1960年代にAuslanderとBridgerが導入した概念である。彼らは, 加群圏の中で全反射加群全体のなす部分圏が分解部分圏になることを証明した。Cohen-Macaulay局所環上の極大Cohen-Macaulay加群全体のなす部分圏も分解部分圏であり, 分解部分圏の概念は多くの重要な部分圏を包括する概念である。私は全反射加群全体のなす部分圏の研究で前年度までに得た知見を基にして, 一般の分解部分圏の研究を行った。具体的に述べると, 導来圏のthick部分圏の中で鎖複体がどのように分布しているかを調べたAvramov-Buchweitz-Iyengar-Millerの研究の類似物として, 加群圏の分解部分圏の中で加群がどのように分布しているかを調べた。より具体的には, 局所環上で, 非自由加群を一つでも含む分解部分圏は極大イデアル以外で局所化して自由加群になる非自由加群を必ず含むことを示し, その分解部分圏内の各加群は直和因子・拡大・シジジーを繰り返し施して極大イデアル以外で局所化して自由加群になる加群に到達できることを示し, その施す操作の回数の上限を与えた。また, この結果を得る上で, 高々可算個の加群から成る分解部分圏の非自由軌跡の次元は1以下であることがわかった。これは1980年代にSchreyerが提示した「複素数体上の解析的Cohen-Macaulay局所代数が可算Cohen-Macaulay表現型ならば, その特異軌跡の次元は1以下である」という予想を肯定的に解決したHuneke-Leuschkeの定理を系として与える。
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