今年度は以下の二点について主に研究を進めた。 ・ルート系に付随する多重ゼータ関数の正の領域における値を記述するベルヌーイ数およびベルヌーイ多項式の母関数の研究:前年度までの結果では母関数には複雑な積分が残されており、実際の計算や応用には不向きであったが、単純凸多面体の台のフーリエ変換を研究することによってこの積分を実行することに成功し、その結果ルート系の情報を十分に反映した母関数の簡単な表示を得ることができた。これによってウィッテンによる平坦接続のモジュライ空間の体積が具体的に計算可能となった。また、これまでほとんどなされていないディリクレ指標を含む多重ゼータ値の計算も可能となり、いくつかの具体例を与えることができた。さらにこの母関数の簡単な具体系から古典的なベルヌーイ多項式に関するいくつかの公式に対して、新たな知見が与えられつつあり、今後の発展が大いに期待される。 ・ 一般の多重フルヴィッツ・レルヒゼータ関数に対する面積分表示の研究:前年度までに二重モーデルトーンハイムゼータ関数に対して面積分表示を与えることができていたが、今年度の研究によって一般の多重フルヴィッツ・レルヒゼータ関数に対しても同様の表示を与えることに成功した。これによりこれらの関数の非正領域における挙動を詳しく調べることが可能となり、特に非正領域におけるベルヌーイ数およびベルヌーイ多項式の定義を与えることができたことは非常に重要であると考えられる。
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