研究概要 |
平成19年度の実績として,総実代数体上のHilbert Hecke固有形式のp-進解析的無限族を構成することが主目的である論文"On p-adic families of Hilbert cusp forms of finite slope"が,整数論を専門とする学術雑誌Journal of Number Theoryに掲載された. この無限族の性質として重要な点は,適当な剰余ガロア表現の変形たちのなすp-進解析的無限族が付随することが挙げられる.さらに,これを用いて「Hilbert版Gouveaの予想」を解決することが主たる研究目的なのであるが,有理数体上の楕円的Hecke固有形式のp-進解析的無限族と総実代数体上のHilbert Hecke固有形式のp-進解析的無限族の関係を明らかにしておくことが重要と思われる. 平成19年度の研究におけるもう一つの大きな実績として,国内外の研究集会に参加しながら専門家と幅広く研究打ち合わせをし,また整数論の専門書を購入し研鑚を深めることで,保型表現の基底変換に関する理論を用いて,有理数体上のp-進解析的無限族を総実代数体上に持ち上げたり,逆に,総実代数体上のp-進解析的無限族を有理数体上に落としたりすることについての画期的なアイデアを得られたことが挙げられる. 今後はこのアイデアを軸に,有理数体上のガロア表現の普遍変形環と総実代数体上のガロア表現の普遍変形環の関係を明らかにする研究を大きく展開できるという意味で,今年度は非常に有意義な研究を促進することができたといえる.
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