本研究の目的は、(1)非退化な超曲面単純K3特異点のリンクの位相型の決定(2)非退化な超曲面単純K3特異点のリンクの位相型とそのQ-分解的極小モデルの例外因子として現れる既約な正規K3曲面との関係を明らかにする ことである。平成19年度は、主に(1)の解決をめざし、(2)の研究も考慮しながら研究を進める計画であった。得られた研究成果は以下のとおりである。 まず(1)の非退化な超曲面単純K3特異点のリンクの位相型について予想をたてた。この特異点は、米村氏によって95組に分類されているが、従来の方法を高次元に拡張した方法を利用することにより、そのほとんどの組において予想が正しいことが証明できた。しかし全ての組に対して証明するには至らなかった。また特性多項式に注目した別証明も試みたが、成果は得られなかった。これらの研究から、高次元孤立特異点のリンクの位相型の研究には、新しい研究方法として、研究目的(2)の特異点解消で現れる例外因子の情報を本質的に使う必要性に気付いた意義は大きい。その後、研究目的(1)と(2)の研究を同時に行うことによって、予想の解決をめざしている。これまでの研究成果として、例外因子として現れる正規K3曲面がある特異点のみを持つ場合には、予想が証明できている。この証明方法は、さらに一般化できる可能性を秘めているので、この方法を継続して試みる意義はあると考えている。 リンクに注目した主な理由は、代数幾何学的に定義された特異点が、どの程度リンク上に位相的性質を反映しているかを調べるためであったが、予想しているリンク上には可算無限個のトーリック佐々木-Einstein計量が存在することも知られている。従って、この多様体がリンクとして現れる可能性のある超曲面単純K3特異点を研究する重要性は大きい。
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