研究概要 |
19年度計画内にある双2重被覆と巡回4重被覆の特異点の解消プロセスと不変量公式の研究を進め,不変量公式を得ることができた.今年度はこれらの公式の応用に着手する.特に,非正規4次曲面,5次曲面の射影から導かれる3重被覆,4重被覆の研究を行う.徳永氏との共同研究において,射影平面の3重被覆の分岐因子となる単純特異点のみをもつ被約平面6次曲線の定義方程式の形を確定させた.この成果はザリスキ氏の成果の一般化で,高次の平面曲線に関しても進展が期待できる.この成果に関する論文"Triple cover of algebraic surfaces and a generalization of Zariski's example"は現在投稿中である. 2重被覆の不変量公式を利用して,スロープ4の超楕円曲線族の不変量であるファイバーの種数と相対的オイラー・ポアンカレ標数の間の不等式を示し,この不等式の等号が成立するような不変量をもつ曲線族の存在性も証明した.十分に大きい相対的オイラー・ポアンカレ標数をもつスロープ4の超楕円曲線族の存在性も証明した.これらの成果については19年度のシンポジウム「分岐被覆に関連する代数幾何とトポロジー(第1回)」「射影多様体とその周辺2007」において発表し,論文"A note on hyperelliptic fibration with slope four"を執筆中である.この研究の重要性は,被覆構造を固定すると不変量のとり得る値に制限があることが判明したことである.巡回3重被覆などの被覆の構造をもつ曲線族の不変量に関する研究も20年度の課題でもある. また,存在が未知であったある特異点をもつ平面曲線に関して,3重被覆による構成に成功した.この曲面の構成法は他の存在が未知の平面曲線に関しても適用することができる.この成果は19年度の「分岐被覆に関連する代数幾何とトポロジー(第2回)」において発表を行った.
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