研究概要 |
平成20年度の研究では主に, 昨年度までの研究で得た不変量公式を用いて, 具体的な問題に着手した. 特に, 平成20年度の計画に記載した有理曲面上の非特異代数曲線の存在性に関して研究を行った. 有理曲面とその上の非特異代数曲線の組の不変量には対数的2-種数がある. この値を固定した場合, 有理曲面上の非特異代数曲線から射影平面またはヒルツェブルフ曲面上での特異モデルが確定する. 従って, 有理曲面とその上の非特異代数曲線の組は対数的2-種数の値により分類することが出来る. 一方で, 対数的2一種数による分類にあられる特異モデルは多くの特異点をもっており, 存在性に関しては知られていない. 今年度の研究では有理曲面から有理曲面への被覆と不変量公式を利用して, 対数的2-種数の値が1の場合の分類表にあらわれるすべての特異モデルの構成に成功した. 本研究成果は「津山代数幾何シンポジューム」, 「特異点と多様体の幾何」において発表し, 論文"Existence of certain singular curves with geometric genus one"を執筆中である. さらに, 昨年度から継続して, スロープ4の超楕円曲線族fのファイバーの種数g(f)と相対的オイラー・ボアンカレ標数χ(f)に関する研究を行った. z≧Z(g)を満たす任意の2以上の整数の組(z, g)に対して, g(f)=g, χ(f)=zとなるスロープ4の超楕円曲線族fが存在するような多項式Z(x)の次数は2以上であることを証明し, 実際にこのような性質をもつ2次式Z(x)を与えることができた. 本研究成果を論文"The existence of hyperelliptic fibrations with slope four and high relative Euler-PoincaTe characteristic"として現在投稿中である.
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