研究課題
シンプレクティック多様体上の完全可積分系(ラグランジアンファイブレーション)を、その構造がよくわかっている空間に変形させることにより調べている。今年度は以下の3つの場合に完全可積分系がトーリック多様体上の標準的な完全可積分系(トーラス作用の運動量写像)に変形できること(トーリック退化をもつ)ことを証明した。いずれも幾何学だけでなく表現論や数理物理などにもしばしば現れる空間である。直交群の旗多様体上のGelfand-Cetlin系直交群(B型、D型)の旗多様体上のGelfand-Cetlin系と呼ばれる完全可積分系のトーリック退化を構成した。これは昨年度のA型の旗多様体の場合の結果の拡張である。多角形のモジュライ空間上のbending Hamiltonian3次元ユークリッド空間内の多角形のモジュライ空間は自然にシンプレクティック多様体になり、多角形の対角線の長さを測る関数たち(bending Hamiltonian)が完全可積分系を与える。この可積分系のトーリック退化を持つことを示した。多角形のモジュライ空間は、射影直線の点の配置空間や、射影直線上の放物型ベクトル束のモジュライ空間などとも関係している重要な空間である。放物的ベクトル束のモジュライ空間上のGoldman系射影直線上の方物的ベクトル束のモジュライ空間には適当なホロノミーを考えることにより得られるGoldman系と呼ばれる完全可積分系がある。また適当な条件の下でこのモジュライ空間は多角形のモジュライ空間と同型になることも知られている。この同一視の下でGoldman系がbending Hamiltonianと対応することを証明した。特にGoldman系もトーリック退化を持つことが分かる。
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International Journal of Mathematics 20, No.5
ページ: 557-572
Advances in Mathematics 現時点では電子版のみ