研究概要 |
本研究では,一般の位相空間における拡張問題を考察するために,1の分割の概念を一般化した性質をもつ関数族の拡張を統一することを目的の1つとしている.20年度にHeath-Lutzerの問題に答える過程で,終域のバナッハ空間の反射性がGO-空間を定義域とする線形有界閉凸拡張子の存在を導くという結果を与え論文にまとめていた.この論文において,拡張子における制約である「閉凸拡張子」が「単調拡張子」に一般化できるかどうか,可分バナッハ空間cを値にとる場合に関しては未解決であるということを問題として提出していた.21年度は,バナッハ空間cを値にとる有界関数族の単調拡張子がGO一空間において存在しないことを,このような拡張子の存在から定義域空間がある種のChoquetゲームの性質をもつことを導いて証明し,上述の問題に否定解を与えた.以上の結果は,バナッハ空間の濃度が同じであっても拡張子の終域として同じ振る舞いをするとは限らないということを示すものであり,van Douwen等にみられる拡張子のノルムの保存の問題への発展を示唆している.21年度は更に,本研究課題の考察において有用であると思われる,実数への半連続関数を位相ベクトル束への半連続関数に拡張する場合の注意となる結果を与えた.応用として,位相ベクトル束を値にとる2つの半連続関数の作る集合値関数と集合値関数の上限が作る半連続関数についての双対定理を与え,バナッハ束への内挿定理に応用できることを示した.
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