研究概要 |
位相空間における拡張問題を考察するために,1の分割の概念を一般化した性質をもつ関数族の拡張を統一することを本研究の目的の1つとしている.19-21年度において,実数への半連続関数を位相ベクトル束への半連続関数に拡張する基本定理を与えていた.特に,位相ベクトル束を値にとる2つの半連続関数の作る集合値関数と集合値関数の上限が作る半連続関数についての双対定理を与え,バナッハ束(Banach lattice)への挿入定理に応用できることを示していた.これらの結果を受け,22年度は,実数値関数で与えられる挿入定理を(自明でない)可分なバナッハ束に置き換えられるかという問題に対し,3つの古典的な挿入定理に関しその終域に着目した以下の定理を与えた.「定理:Dowker-Katetovの挿入定理における終域R(=実数空間)は,'任意の自明でない可分なバナッハ束に置き換えることができる.Michaelの挿入定理でも同様なことが成立するが,Katetov-Tongの挿入定理では成立しない.」この定理は,拡張問題における関数の終域の構造にどのような情報を必要とするかという問題に示唆を与えるものであり,同時に,挿入定理の終域のテスト空間としてどのようなバナッハ束がふさわしいかという新たな研究方向を示した.この視点は,拡張作用素の存在問題にも応用が期待できる.
|