再生核とは数学的によい性質を持つ関数であるが、近年は非線形相関解析など数理科学の分野にも応用され、実用上も有用である. 本研究はこの再生核に対して、微分幾何学的理論の構築、および再生核を用いた情報幾何学の理論構築を目的とする. また、再生核理論、および情報幾何学に関連した微分幾何学の発展と、数理科学への応用も目的とする. この研究目的に対し本年度は、具体的な再生核についてその幾何学の解明、および再生核の応用を見据えた情報幾何学理論の構築などを行った. まず一般的に、情報幾何学は確率密度関数族のパラメータ空間に幾何学構造を導入するのに対して、再生核理論は確率密度関数族の標本空間に幾何学構造を誘導する. そこでガウスカーネルなどの具体的な再生核の幾何学について検討した結果、再生核理論は多様体の体積分布やリーマン計量などに関する、部分多様体論的立場からの理論構築が必要であると認められた. (一方情報幾何学は、多様体上のアファイン接続とその測地線に関する幾何学の構成が中心である. )そのため、情報幾何学の立場からの研究を行うことと同時に、Wasserstein幾何学などの新しい確率密度関数族の幾何学との関連解明に取り組んだ. この問題は、現在も引き続き検討中である. また、再生核理論と情報幾何学の数理科学への応用に関して、微分幾何学的立場から情報幾何学を計算幾何学へ応用するという結果を得た. これは特に、計算幾何学の座標依存性に関する問題点を指摘したものである. この研究成果は国際学会での招待講演等を含め、論文として発表している. さらに、昨年度からの継続として取り組んでいる統計多様体の一般化についても、いくつかの結果を得た. これらの結果は、国際会議紀要等に掲載予定である.
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