前年度までの研究成果を踏まえ、今年度はホロノミックD-加群についての研究を進めました。特に、良い関手性を持つようなベッチ構造はどのようなものかについて研究しました。まず、1次元射影空間上のD加群のフーリエ変換のストークス構造について調べ、BlochとEsnaultが導入したホモロジー理論を用いた詳細な記述を与えました。これより特に元のD-加群がベッチ構造を持つ場合にフーリエ変換のベッチ構造も記述できたことになります。この結果は出版される予定です。次により一般のホロノミックD-加群のべッチ構造について研究しました。偏屈層やホロノミックD-加群のはりあわせに関するBeilinsonのアイディアを適用することで、ベッチ構造の良い定義が得られました。そして、積分、引き戻し、局所化などの各種の標準的な操作についての関手性を示しました。これはホロノミックD加群と正標数の代数多様体上のある種の層との類似性を研究する上で基礎になると期待されます。この結果はプレプリントarXiv:1001.2336にまとめて公表しました。また、この研究の過程で混合ツイスターD-加群のはりあわせについてのアイディアが得られたので、研究を進めています。 この他に、カンドルコホモロジーの計算をしました。有限体となっているようなカンドルのコホモロジーについての以前の研究結果を、少し違うタイプの応用上重要と思われるカンドルの場合に拡張しました。この結果は論文にまとめて投稿しました。 Donaldson型不変量についての本を出版し、Deligne-Malgrange格子についてのサーベイを出版する予定です。
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