研究概要 |
ミラー対称性の圏論的定式化(ホモロジー的ミラー対称性)などの状況において, しばしばA∞圏から三角圏を構成することを考える. この操作において, A∞圏の持つ情報がどのくらい失われるか?ということを考える必要があるが, 未だ十分に議論されないままとなっている. 今年度は主にこのA∞圏と三角圏の間の関係について議論した. 完全な理解を得るために引き続き議論する必要があるが, 三角圏が想定されるよりかなり豊富にA∞圏の高次の積構造を含んでいることが分かってきた. その部分的結果を信州大学における研究会「空間の代数的・幾何的モデルとその周辺2008」などにおいて発表した. これらの構造は物理的にはtreeの開弦(とDブレイン)の系に対応する. 弦理論としては, 量子的な開弦と閉弦の混在する系に対応する代数構造が一番大きい構造である. そのような代数構造の持つ性質についての部分的結果として, その代数構造の, 量子的な閉弦の持つ代数構造から量子的な開弦の定める代数構造への写像としての理解を得, ドイツのMax Planck研究所における研究会「Alqebraic and Geometric Deformation SpAces」において発表した. その他, ADE型特異点をはじめとするあるクラスの特異点に対して定まる行列因子化の圏の三角圏構造について得られた結果(「研究発表」欄の論文)について, カナダのBanff国際研究所における研究集会「Matrix Factorizations in Physics and Mathematics」, 東京大学数物連携宇宙機構において発表した.
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