研究概要 |
本研究の目的は特異点をもつラグランジュ部分多様体のフレアー理論の研究であるが,その特異点をもつラグランジュ部分多様体として,ここでは次の二つの場合を考察した.一つはラグランジュはめ込み.もう一つは特異点の補集合を想定した,凹型のエンドをもつシンプレクティック多様体のなかのルジャンドルエンドをもつラグランジュ部分多様体である.特に平成22年度は当初の実施計画に基づき,後者のケースに関するフレアー理論の研究を行った.まず滑らかなラグランジュ部分多様体のフレアーホモロジーは閉多様体のモースホモロジーをトイモデルとしていることに注意する.そしてルジャンドルエンドをもつラグランジュ部分多様体のフレアーホモロジーは境界付き多様体のモースホモロジーをトイモデルにしていることが以前本研究代表者により明らかにされた.次にラグランジュ部分多様体のA∞代数は,閉多様多のモースホモトピーをトイモデルとしていることに注意する.したがってルジャンドルエンドをもつラグランジュ部分多様体のA∞代数を構成するためには,境界付き多様体のモースホモトピーを詳しく調べる必要があることがわかる.平成22年度は,境界付き多様体のモース複体におけるカップ積の構成を行った.これは境界付き多様体上に,ある条件を満たすモース関数を3つ用意し,それらを用いてモース複体上にライプニッツ則を満たす積を書き下すというものである.さらに境界付き多様体のモース複体におけるA∞関係式を満たす高次の積についても,その存在を示すことに成功した.
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