研究概要 |
本年度は,京都大学数理解析研究所の石井敦氏と「コバノフ理論の仮想絡み目への拡張」に関する共同研究を行った.コバノフ理論とは,古典的絡み目の不変量を与えるホモロジー理論であり,ジョーンズ多項式の自然な拡張になっている.また,絡み目コボルディズムに関して関手性を持つ事も知られている.コバノフ理論を仮想絡み目に拡張する際の困難はメビウスコボルディズムの存在にあるが,我々は宮澤多項式の変数の情報をうまく用い,拡張されたフロベニウス代数を用いる事でその困難を克服した.今後の課題は,ラスムッセン不変量の拡張,結び目コボルディズムに関する振る舞いの考察,曲面結び目への応用の考察などが考えられる.この共同研究は,「コバノフ理論を用いた曲面結び目不変量構成」への第一段階として有用である事が期待できる. カンドルを用いた研究に関しては引き続き研究中である.中でも特に,Joao F. Martin氏によるCategorical groupを用いた曲面結び目不変量との関係性を模索中である.この方向性は,「結び目カンドルは,曲面結び目のどのような情報を反映しているか?」いとう基本的な問題に関する一つの答えを与えるものと期待される. 本年度は,新たに一本の論文が採録された.また,上記共同研究の内容をいくつかの研究集会やセミナーで発表し,国内外の研究者と議論を交わしたが,その際の旅費を科研費から捻出した.
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