研究課題
本研究の目的は、理工学分野において多く現れる非線形拡散問題の解を近似する反応拡散系を提案し、その解析を行うことである。平成19年度はその中でも、氷の融解・凝固の過程を記述する古典的ステファン問題や、地下水の流れを表す多孔質媒体流方程式を含む退化放物型問題を取り扱い、その解を近似する反応拡散系を提案した。反応拡散系導出のアイデアは、問題を難解にしている拡散の退化性、延いては拡散の非線形性を取り除くことにある。このことにより、解析は容易になる。実際にその反応拡散系の解により、問題の解が近似されることを関数解析的手法を用いて示すことができた。本研究は、半線形の問題である反応拡散系を取り扱うことにより、元の非線形性が強い問題の解析が可能になることを示唆するものであり、その応用が期待される。提案した反応拡散系を用いて、非線形拡散問題に対する統一的で効率の良い数値解法を開発することも、研究の目的である。退化放物型問題に対して提案した反応拡散系の様々な離散化手法について研究した。実際に数多くの数値実験を行った結果、時間離散化に陰的離散化を適用するという単純な方法が有効であること、また、その方法が既存の数値解法に比べて効率の良い数値解法であることが示唆された。この数値解法の導出のアイデアは単純なものであり、既存の解析手法が使えるため、その解析も容易であろうと考えられる。今後は、数値解法のさらなる検討、解析を行うとともに、交差拡散系を含む非線形拡散問題へと反応拡散系近似理論の研究を発展させる。
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盛岡応用数学小研究集会報告集
ページ: 35-54
Nonlinearity 20
ページ: 2319-2332
Nonlinear Analysis, Theory, Methods and Applications (印刷中)