研究課題
本研究の目的は、理工学分野において多く現れる非線形拡散問題の解を近似する統一的な半線形反応拡散系を提案し、その解析を行うことである。平成20年度は非線形拡散問題の中でも、数理生態学等に多く現れる交差拡散系を取り扱った。交差拡散系の解を近似する反応拡散系については飯田氏と二宮氏(2006年)によりすでに提出されている。しかし、問題が限られていたり、解析のための仮定が強すぎるなどの問題がある。本研究では、彼等のアイデアを洗い直し、より一般的な問題の解を近似する反応拡散系を提案した。この反応拡散系は、本研究1年目に提出した退化放物型問題に対する反応拡散系近似を拡張したものでもある。十分に一般的な状況下で、提案した反応拡散系の弱解が交差拡散系の弱解に収束することを示した。同時に、この広い枠組みの中で、交差拡散系の弱解が存在することを、提案した反応拡散系を用いて示すことができた。これは、半線形の問題である反応拡散系を取り扱うことにより、元の非線形性が強い問題の解析が可能になることを示唆するものである。1年目の研究と合わせて、拡散が交差していない退化放物型方程式系と、非退化交差拡散系を含む非線形拡散問題の解が、ある半線形反応拡散系の解によって近似されることが分かった。提案した反応拡散系を用いて、非線形拡散問題に対する統一的で効率の良い数値解法を開発することも、研究の目的である。平成19年度に、提案した反応拡散系の様々な離散化手法について研究し、退化放物型問題に対して効率的な数値解法を提出した。平成20年度は、この数値解法についての解析を進めた。
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Nonlinear Analysis, Theory, Methods and Applications 69
ページ: 3512-3524
Kybernetika (印刷中)