本研究の目的は、理工学分野において多く現れる非線形拡散問題の解を近似する統一的な半線形反応拡散系を提案し、その解析、数値解析への応用を行うことである。本研究1年目には氷の融解問題や地下水の流れの問題などを含む退化放物型方程式を取り扱い、2年目には動的な干渉作用を示す2種生物種の競合問題に代表される非線形交差拡散系を扱った。結果として、それらの問題の解が、ある半線形反応拡散系の解により近似できることが分かった。平成21年度は、これらの研究を踏襲し、更なる一般化、応用への可能性について検討した。2年目の研究により、退化放物型問題の研究が数値解析に役立つことが分かっている。退化放物型問題の研究では1つの方程式を1つの偏微分方程式と1つの常微分方程式により近似している。そこから得られた数値解法を用いると、非線形拡散の扱いにくい部分を計算コストの少ない常微分方程式の計算に置き換えることができ、効率的に数値解を得ることができる。これに対し、交差拡散系の研究では1つの方程式を2つの偏微分方程式で近似している。したがって、この研究から新たな数値解法を得たとしても効率のよいものは得られないと予想される。そこで、平成21年度は、交差拡散系も偏微分-常微分系で近似することを考え、その解析を進めた。さらに、その離散化を行うことで、非線形交差拡散系に対する汎用的で簡便な数値解法が得られた。これらの研究は反応拡散系近似理論の更なる発展を期待させるものでもある。
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