研究概要 |
本年度は, 主に投資問題とデリバティブヘッジ問題の研究を行なった. 1. 前年度に引き続き, ポートフォリオインシュアランス問題(資産下限制約付き最適投資問題)に取り組んだ. 無期限期間の資産成長率を基準にした場合, 最適投資戦略を一意的に決定することができない. 本年度はこの問題を解決するため, 異なる投資戦略で資産成長率が一致する条件を示し, 投資戦略の効率の差を明確にする補助的指標を示した. これまでの研究成果を論文にまとめて, 発表した. ("Portfblio Insurance with Liquidity Risk, " Asia-Pacific Financial Markets, " Optimal Growth Rate in Random Trade Time, " Advances in Mathematical Economics) 2. デリバティブを保有する投資家を考え, デリバティブのヘッジに伴うリスクの最小化問題の研究を行った. 具体的には, 確率的取引時刻モデルを拡張したモデル(部分執行リスクを考慮した離散時間モデル)を用いて, 最小分散ヘッジ問題に取り組み, 最適ヘッジ戦略, 最小ヘッジコストについて検討した. 従来の研究では最適解をヒルベルト空間の射影定理を使用して導出していたが, 本研究では動的計画法を用いることにより, 新しい最適解の表現を得た. さらに最適解の計算に必要な数式はすべて再帰式によって与えることが可能であることを示し, 従来の方法より計算効率が高いことを確認した. 研究成果は複数の国際会議や国内研究集会において発表した. 3.資産流動性を表現する有効な方法として. 取引量と取引価格の関係をモデル化した確率供給曲線が存在する. この確率供給曲線を利用したデリバティブのヘッジ問題の研究に着手した.
|