研究概要 |
平成19年度において私は主に,非凸領域におけるポアソン方程式の有限要素解の精度保証に関する研究を行いました.ポアソン方程式に対する精度保証は,非線形楕円型方程式の精度保証に応用することができるという点で非常に重要です.研究の結果として非凸な角の周囲でメッシュを細かく切る,いわゆるメッシュリファインメントを用いた有限要素解に対し,まず,L^2ノルムおよびH^1_0ノルムに関する精度の良い事前誤差評価を得ることができました.また,ドイツのKarlsruhe大学のMichael Plum教授との共同研究により,L^∞事後誤差評価を得ることができました.両方とも論文投稿は現在準備中ですが,平成19年度において,前者の成果については日本語での発表を1回と国際研究集会での発表を3回,後者の成果については国際研究集会で1回の研究発表を行っています.本研究課題における一つの大きな目標は,非凸領域において,流体の運動を記述したNavier-Stokes方程式に対する精度保証を効率的に実現することです.そのためには重調和方程式の解に対する誤差評価が必要になってきます.このとき,凸領域に用いられる誤差評価と同様の方法を用いても精度保証を実現することができますが(結果は平成19年度にHokkaido Mathematical Journalに掲載),非凸の角に起因する問題のため,かなり小さなReynolds数の場合にしか適用できません.効率的な精度保証のためには,ポアソン方程式の場合に考案したのと同様の,メッシュリファインメントを反映した誤差評価を構築することが必要です.この問題に関しては具体的な事前誤差評価はまだ得られていませんが,平成20年以降に成果を出すための準備として,19年度においてはいくつかの数値実験を行いました.
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