研究概要 |
本研究課題の目的は,非凸領域において,2次の非線形楕円型方程式および流体の運動を記述したNavier-Stokes方程式に対する精度保証を効率的に実現することでした.ここで,2次の非線形楕円型方程式の精度保証を実現するにはポアソン方程式の,Navier-Stokes方程式の精度保証を実現するには重調和方程式の有限要素解に対する効率的な事前誤差評価が必要になります. 前年度までの研究により,ポアソン方程式に対して,非凸な角で細かくメッシュを切るようなメッシュリファインメントを反映した誤差評価を構築しましたが,21年度においてはその評価をさらに精密化することに成功しました.また,精度保証を効率的に行う上で必要な,三角形要素上の補間誤差定数の精密な評価を得るための方法を確立しました.この結果により,例えばメッシュに正三角形の要素が含まれるような場合には,従来の誤差評価を3倍以上改善することができるようになりました. 重調和問題については,領域が非凸な場合については予備的な数値計算を行ったのみにとどまりましたが,領域が長方形の場合に研究の進展がありました.重調和方程式に対して精度保証を行うには,4階微分に関するあるノルム不等式を証明することが必要です.具体的には,H^4かつ晦H^2_0に属する関数について,H^4セミノルムをダブルラプラシアンのL^2ノルムで押さえる定数が必要となります.領域が正方形の場合には前年度までに非常にラフな評価は得られていたのですが,本年度においてはそれを精密化し,長方形領域に一般化しました. また,非凸領域における事後誤差評価についても研究を行い,結果を得ています. また,平成21年度においては,国際研究集会での発表を3度行いました.
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