研究概要 |
素数pについて、固定した半径r(p)のp進円板の集合S(p,r(p))を考える。各素数pごとに、S(p,r(p))からひとつの円板を選んでそれらの直積として表されるようなp進体の直積空間IIQpの部分集合の全体D({r(p)})は可算集合であるが、まず、D({r(p) })の上にコルモゴロフの微分方程式の解としてマルコフ過程を構成した。 各p進円板の半径r(p)を0に近づけるとき、このマルコフ過程の極限として、直積空間IIQpの上のマルコフ過程が得られる。この過程はただその存在が示されたのみでなく、すでに研究されているp進体上の加法過程の独立な直積であることが分かり、したがって推移確率が明示的に与えられる。 さらに、ある条件の下で、この過程がp進体の整数環に関する制限直積A'中の点から出発するとき、すべての時刻において過程がA'上に存在することを証明し、したがって、これに任意の実数値マルコフ過程をつけ加えて、アデール環上の確率過程が構成された。 特に各p成分が準安定過程である場合に着目し、そのp進単位円板からの脱出時刻に関係するある確率変数の期待値が、オイラー積の収束領域においてリーマンのゼータ関数を与えることを示した。この表示式から、複素数sと、その実部や複素共役におけるゼータ値の比が簡潔に表現される。また今後、この式を用いて、ゼータ関数をアデール環上の確率過程の確率論的性質で記述し、解析する方法を確立できることが期待できる。また、この手法は他のゼータ関数やL関数にも適用することができると考えられ、これらの関数の解析にも応用できると考えられる。
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